AIなどの情報技術の発展は社会構造の変革をもたらし, 新たな価値の創造へとつながる反面で, 社会格差の拡大をもたらすとも言われています. また, 我々が遭遇してきた大規模自然災害のように, 人間が直面する課題は困難で複雑になっています. このような世の中の変革や乗り越えるべき困難に対応する”しなやかな(柔軟な/強靭な)人材の育成”, すなわちレジリエントな学びが求められています.
困難を克服できた過去の行動や思考は, 新たな困難に対する有効な指針となり得ると言われています. しかし, 特に災害のような大きな困難は個々人にとっては一生に一度経験するかどうかです. 加えて, 教訓のほとんどが暗黙知であるために, 過去の経験から得られた行動や思考に関する教訓の多くは共有されることなく忘れられていきます. レジリエントな学びを実践するためには, 個々人の経験から得られた教訓を共有・活用できる情報技術の発展が必要不可欠です.
本学会では2018年度に発刊した学会誌(Vol. 35, No.2)において, 「安心・安全な社会に貢献する教育システム」に関する特集号を実施し, 不測の事態を想定できる人材の育成支援技術に関して取り組んできました. 本大会ではそのような事態を乗り越える能力を育成するための教育をレジリエントな学びと捉え, 暗黙知の共有や継承を重要な要素の一つと位置付けて, その学びのあり方と支援技術に関して議論します.